インデックスサーチ機能付きCDプレーヤー |
iPhone6S
調べるとインバルのマーラーは1985年から1年かけて全曲を録音。この全集盤は1987年に発売されたもので、16枚組で定価56,000円!当時流行った24K GOLDプレス。帯はまだついたまま。帯とか捨てられないんですよね。ところでこのCD、付属の解説書で悩ましいことが一つ。全集ではないバラ売り盤には各インデックスのタイミング(時間)が記されていたが、そのインデックスがどういう意味なのか(例えば「第1主題スタート」とか)は記されてなかった。他方、全集版にはタイミングが無く、インデックスの意味が記されていた。ということで時間情報を得るためなら当時のバラ売り盤を中古で集めても良かったのかもしれない。
インデックスサーチ機能、昔は当たり前の機能だったのに、今売られているCDプレーヤーにはほとんど付いていない。新品で買えるのはTascamの業務用CDプレーヤーだけではなかろうか。
インデックスが打ち込まれたCDが発売されなくなったことも関係しているのだろう。実際トラックだけで十分だろうし、今やネットにも「インデックスサーチ機能は何のためにあったんだ?」なんて質問が出たりするくらいだ。
ソフト屋さんもハード屋さんも有効な使い方を見いだせないまま、どちらともなく自然消滅してしまったんだろうなぁ。
でも実は、クラシック音楽を聴くのに重宝するのだ。
かつてデンオンが発売したインバルとフランクフルト放送交響楽団のマーラー交響曲全集のCD。交響曲なんてほとんど全てのCDが各楽章をトラックで分けているだけだが、こいつは違う。各楽章の中を更にインデックスで細分化しているのだ。たとえば第1楽章の序奏、第1主題、第2主題、展開部、再現部、コーダ…など、各タイミングの冒頭にインデックスが打ち込んである。
マーラーの交響曲は概して長大で構成が複雑である。1楽章で30分とか、第5楽章まであったりとか、提示部かと思う程の立派な序奏があったりとか、第3主題まであったりとか。がんばって聴いていてもいったい自分が今どの辺にいるのか分からなくなってしまう。特に7番は殊更に長大な上に抽象度も高いから、取っつきにくさが極まる。
そんな時に、長大な楽章を構成内容に従って区切ってくれるインデックスがあるとたすかるのだ。例えば10のインデックスが打ち込んであると、30分の長大な楽章を3分づつの小曲にしてくれる。聞きやすくなるだけでなく、曲の構成が耳で覚えられる。
このCD全集は発売当時に買ったものだか「マーラーは面倒だ」と思って何十年もしまったままだったもの。「いい年になったし、そろそろマーラーもちゃんと聴いてみるか」と一念発起。
ということでヤフオクでインデックスサーチ機能付きの中古CDプレーヤーを物色して、ソニーのCDP333ESDを2万円で落札。でも出品者が輸送用のネジを緩めたまま発送しやがったためか、再生が不安定。読み込みエラー頻発。ヤフオクの中古ハードなんてこんなレベルだというのは経験的に分かっていたけど、またやっちまった。でもタスカムの新品は7万円近くするし。
それでもだましだまし再生して、9番まである交響曲(8番除く)に打ち込まれたトータル340のインデックスのタイミング(時間)を記録、エクセルで一覧表にしましたとさ。ふぅ。
このエクセル地図さえあれば、インデックスサーチ機能がないCH Precision D1で聴いても大丈夫。迷子にならない。ダイレクトにインデックスのところまで飛ぶことはできないけれど。
ずーっと苦手意識が強かったマーラー、いまでは苦手で無くなっただけでなく、指揮者や奏者ごとに演奏の違いを楽しむ余裕もでてきた。マーラーのCD、いろいろ買いそろえ始めている。
さて、クラシック音楽業界の不況はますます深刻で、すでにフィリップスはデッカに吸収されて消滅。そのデッカもユニバーサル傘下。EMIはユニバーサルに買収された後ワーナーに転売され消滅。
今は保有する古い音源をSACDとかハイレゾとかに加工して名盤シリーズとか銘打って何度も使い回す商売。なおかつ日本でのメイン客は団塊世代、先細りである。
アーチスト側もメジャーレーベル離れを始めている。ベルリンフィルやロイヤルコンセルトヘボウの自主レーベルとか、デジタルコンサートホールとか。でも、業界構造的には新しいのだろうが、受け手側から見ればクラシック音楽のイメージ自体はほとんど変わらないんだよなぁ。
若い人に対してクラシック音楽の門戸を広げる工夫を考えて欲しい。
デンオンのマーラー交響曲のインデックスはいい試みだったと思うが、残念ながら普及しなかった。体制的にも技術的にも新しいチャレンジに満ちた話題の録音だった。インデックス機能もその一つだったはずだが、これだけはぜんぜんさっぱり話題にならなかった。デンオン自身もPRしなかった。どうして?業界が保守的だから?
本編と絵コンテを同時に画面にだして楽しめるアニメBDがあるように、音にあわせてスコアが見えるディスクやファイルとか。デジタル時代の今、クラシックという古くさい音楽を今風に魅せる知恵と工夫、レコード会社にはがんばって欲しい。